「ブラック・スライド・マントラ」この作品は滑り降りる子供のお尻によって完成されるとイサム・ノグチは言葉を残しました

Isamu Noguchi

札幌の大通公園を案内された20世紀を代表する世界的彫刻家のイサム・ノグチは、このパブリックアートの設置について驚くようなことを求めました。

作品データ Data

作品名 Title ブラック・スライド・マントラ
作家名 Artist イサム・ノグチ Isamu Noguchi
制作年 1988年
材質 アフリカ産花崗岩
寸法(H×W×D;cm) 360 x 400
備考 大通公園

作品について About

雪が積もる周辺環境に映える黒色の花崗岩約80tを素材に使い、のちにイサム・ノグチ庭園美術館となる香川県牟礼町のアトリエで制作されました。

優美な曲線を描き存在感のあるフォルムは、内部をくり抜いた階段を昇ってらせんの坂を滑り降りる滑り台としても市民に親しまれています。

1998年5月、モエレ沼公園の基本計画のため札幌を訪れたイサム・ノグチは、この作品を設置する場所を選定する際に、南北の車道で分断されていた大通公園8丁目と9丁目の東西をつなぎ、そこに作品を置きたいと札幌市に無理な提案をしました。

大変な注文をうけた札幌市は交通止めに2年をかけて実現しましたが、1992年の除幕式を見ることなく、イサム・ノグチは心不全によりニューヨークの大学病院で生涯を閉じます。

既存の道路を改修してまで公園に整備する、それは子ども達の遊び場と市民の憩いの空間を広げたい、という発想から派生した強い想いでした。そして、

この作品はまだ完成ではない。子どもたちが何度もすべり、そのお尻でなじむようなかたちになって、初めて完成といえる。

という当初のイサム・ノグチの言葉を思い起こさせるように、今もなお子供たちが屈託なく遊ぶことで、作品が完成へと近づく過程を確かめることができるでしょう。

晴れた土曜日の午後、イサム・ノグチは花盛りの大通公園を西へ歩きながら「いい公園だけど信号で車に止められるのが惜しいね」と話しつつ、西9丁目に着いたとき、ちょうど通称「クジラ山」といわれる砂場に隣接した築山で、たくさんの子供たちがその斜面をそりのように滑りながら歓声をあげて遊ぶ光景を目にしました。クジラ山で遊ぶ子供たちに交じって、笑顔で斜面を滑り降りるイサム・ノグチの映像がビデオに残っているそうです。

この作品の前身となる作品はイサム・ノグチが、1986年に開催されたヴェネツィア・ビエンナーレにアメリカ代表として出品した、白大理石の「スライド・マントラ」です。

当時「スライド・マントラ」の制作に協力した石職人の中には北海道出身の安田 侃先生がおり、のちに同じ北海道にモエレ沼公園のような彫刻公園「安田侃彫刻美術館 アルテピアッツァ美唄」を制作するといった、不思議な縁がありました。

設置場所 Location

北海道札幌市中央区大通西 大通公園

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作家について Artist

イサム・ノグチ Isamu Noguchi
20世紀を代表する世界的抽象アーティスト、イサム・ノグチの紹介ページです。 略歴のほか、作品の特徴、パブリックアート一覧など、アーティストを深く知るために参考にしていただけます。

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