「こちらとあちら Here and There」動きのある西洋彫刻のフォルムと異なり東洋思想を反映した静謐な哲学的作品

Antony Gormley

南大阪にある公共施設の和泉シティプラザ敷地内に、イギリスを代表する具象彫刻家アントニー・ゴームリーのパブリックアートが設置されています。

作品データ Data

作品名 Title こちらとあちら Here and There
作家名 Artist アントニー・ゴームリー Antony Gormley
制作年 2002年
材質 コールテン鋼
寸法(H×W×D;cm) H190(人体)、H1,000(ポール)
備考 和泉シティプラザアートワーク

作品について About

仏教を学んだ経験から、肉体に宿る精神性を封じ込める作品を多く制作するアントニー・ゴームリーは、自身の体に石こうで型をとった190mの人体像を10m高さのコールテン鋼ポールの上に、物憂げにたたずませました。

他の作品同様、表情が作り込まれていない上、地上からは高い場所まで表情がうかがえないため、鑑賞者はこの立ちすくむ作品の想いをさまざまに巡らせることでしょう。

こちらとあちら Here and There

ここにわたしがいる そして作品はあちらにある

そんなにシンプルなものだろうか?空間に高く掲げられた彫刻。より正確にいうならば、ポールの上に固定されている彫刻は、ヨーロッパの慰霊碑や特に戦争の英雄記念碑としてむしろ見慣れているかもしれない。

しかし、この身体の形は英雄ではない。大地と天空との間でただ単に宙ぶらりんな身体。実際、地上10mのポール上で、それはどんな風に感じているのか?実際試してみた。
とてもこわいー膝はガクガク、絶対に下を見てはいけない。見たら放り出されてしまう。

聖職政治時代の古い法律に次のような言い回しがある。
高く掲げられるとは孤独である、多分より遠くは見えるが、触れることのできないものであると。

そしてこの作品は何だろうか?

身体がかつてあった場所、身体がかつて占めていた空間、誰の身体でもあり得る空間、わたしの身体でもあなたの身体でもある身体が、ふたつの大きな水の缶のなかに海を、空の裂け目を、地球、世界と無限の空間が互いに行き来する場所を見つめている。これは、空間帯に高く投げ出された掲げられた身体の集まりbodymassー軌道へと旅する途中で、方向を求めてちょっと立ち止まっているある身体ともとれるだろう。
アントニー・ゴームリー

The work connects the new City Plaza with the adjoining water supply tanks which symbolizes the source of civic life.
Gormley mentioned, “my body, your body, looking out on the sea in two big cans, on the chinks of sky, on the spaces inbetween where the earth, the world and the limitlessness of space interact.

公式サイト より

精神は身体という物質を借りて存在するといった、東洋の仏教思想を踏襲するアントニー・ゴームリーは、この作品を制作した10年後の2013年に、高松宮殿下記念世界文化賞を受賞しました。

アントニー・ゴームリーのパブリックアートは関西では他に、大阪市内に「アナザー・タイムⅨ」や、15mの高さの「MIND-BODY COLUMN」を鑑賞できますので、ぜひご覧ください。

「アナザー・タイムⅨ」都心の高層ビル地下にひっそりと静かにたたずむアントニー・ゴームリー作品が訴えかけるもの
大阪のオフィス街、淀屋橋の新築高層ビルのB1Fに、イギリスを代表する具象彫刻家のアントニー・ゴームリー最新作があります。
「MIND-BODY COLUMN」高層ビルの谷間に15mの柱で表現されたのは地球と人とのつながり
アントニー・ゴームリーは仏教を学んだ異色の経歴をもつイギリス出身の彫刻家で、東洋の思想に影響を受け精神性を宿すパブリックアートを多く手がけています。

和泉シティプラザには他にも、国内現代美術家のパブリックアートが12点設置されていますので、機会があれば足を運んでみてください。

設置場所 Location

大阪府和泉市いぶき野 和泉シティプラザ 1F 中庭

周辺のパブリックアート

アントニー・ゴームリーの他作品 Other Works

作家について Artist

Antony Gormley(アントニー・ゴームリー)
静謐な人物像の作風で知られ、イギリス具象彫刻を代表するアントニー・ゴームリーの紹介ページです。 略歴のほか、作品の特徴、パブリックアート一覧など、アーティストを深く知るために参考にしていただけます。

 

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