大阪梅田の都心部にほど近いオフィスビル地下の公開空地に、約30年前に設置された無機質な空間を彩る面的なパブリックアート。イタリア語で「通り道」と題された作品の上を歩いて通ることができます。
樹の幹と地面を模した7m四方の白い大理石がビルの床に広がり、異質でどこかワクワクさせる空間がここにはあります。
作品データ Data
作品名 Title | – PASSAGGIO – |
作家名 Artist | 中村 真木 Maki Nakamura |
制作年 | 1994年 |
寸法(H×W×D;cm) | 300×700×700 |
備考 | パッサジオ |
作品について About
山口県で生まれ幼少期よりイタリアで育ち、現在も日本とイタリアの2拠点で作品制作を続ける中村 真木先生が、名声を得る起点となった作品です。
後にこの作品により第3回大阪パブリックアート、大阪アメニティー表彰を受賞し、大阪工業会でサクラアートミュージアムでの受賞者展を開催しました。
浮かれたように膨張した使い捨ての消費感覚が豊かさを錯覚させ、優越感さえ感じさせてくれた時期
そのような風潮が瞬く間に萎えた今、我々の内には何が残ったのであろうか。
内包すべき磨かれた感性。
それこそは時に左右されず、泡のように消えてしまわない豊かさである。心を磨き育てる環境が精神と物質のバランスのとれた本当の価値観を作り出す。
モラビアの言葉に
”お金を貯めるには能力があればよいが、それを使うには教養が必要である”
とある。
人間のかかわる感性を主体とする機能と構造を備えた使い捨ての環境にならない街つくりが真剣に求められている。 ー 中村 真木 (1999年こうぎょう より)
中村 真木先生は、イタリア産カラーラの大理石を素材として西洋の伝統的技法を用いて、木や花、太陽や時間といった自然をモチーフに東洋の禅思想を造形に昇華させています。
中村は「大理石は地球の骨である」と唱え、自然が生んだ素材の緻密さと、その美しさ・力強さに惹かれて、「自然」をテーマに制作している。
地球の内部から外に向かって伸びてゆく木々や、植物・風、命の媒体としての水の動きに魅了され「生命力」を題材として、造形の在る生活空間の大切さと、時を超えて未来に生きながらえる「形と表現」を探求している ーWikipedia より
大量消費社会へのアンチテーゼを、生命と感性を磨く尊さを根底に置きながら人間の通る道として、未来への警鐘を鳴らしています。
中村 真木先生は国内外での展覧会事例も多く、パブリックアートも他にいくつか設置されていますが、この作品を制作した1994年に滋賀県近江八幡市安土町『文芸の郷』という国際文化交流拠点の造成計画に参画し、敷地内に面積約5,000㎡の広場をデザインした大作を見ることができますので、一度足を運んでみてください。
設置場所 Location
大阪市北区堂島浜 JRE堂島タワー B1F 中庭
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