女性像でありながら雄々しく立ち尽くすその姿は、教会設計の大家ヴォーリズデザインの建物に劣らない、力強い空間を構成しています。
作品データ Data
作品名 Title | 自由 (La Liberte) |
作家名 Artist | アントワーヌ・ブールデル Antoine Bourdelle |
制作年 | 1922年 |
寸法(H×W×D;cm) | H375 |
備考 |
作品について About
現代彫刻の巨匠アントワーヌ・ブールデル(Emile-Antoine Bourdelle 仏 1861~1929)が1918~22年の間に製作した”アルヴェアル将軍記念群像”の中の一体。
アルヴェアル将軍は、アルゼンチンの解放者で、その行動力と人格を象徴する理念”力・勝利・自由・雄弁”の像のうち”自由”を表現した一体である。この作品群は、ブールデルの目指した”建築する彫刻”の第一歩となった。 ー作品銘板より
日本には同じ作品がほかにも、北海道立函館美術館と箱根彫刻の森美術館、福岡市博物館の3か所に設置されていますが、もともとはブエノス・アイレスのレコレータ広場にある「カルロスM.デアルベア将軍の記念碑」の4体と将軍像が起点となります。
アントワーヌ・ブールデルは将軍をたたえる徳を4つの人物像にあらわしました。持ちものや身につけるもの(アトリビュート)がそれぞれの像の特性を象徴しています。すなわち、《力》はライオンの毛皮を身にまとい、《勝利》は剣と盾を、《自由》は樫の木を、《雄弁》は巻物を持っています。
ブールデルはこのようにヨーロッパの伝統的な寓意像に倣いながら、造形面ではアルカイック彫刻のような簡潔な力強さをとり入れました。しかしこうした重厚で堅牢な記念碑的彫刻はしだいに時代の趨勢ではなくなります。近代彫刻のその後をたどれば、モニュメントが本来置かれる場所から分離し、彫刻から台座が消え、彫刻全体のヴォリュームもそがれていったという歴然とした流れがあります。ですのでブールデルのような作家はどうしても反時代的に映りますが、制作から100年近く経過したいま、あらためて見てみると意外に新鮮な部分もあります。それはおそらく、ブールデルが師ロダンのように近代人の自我や苦悩を表現するのではなく、アルカイックやロマネスクの質実剛健な彫刻に自らの主題や造形の源泉を求めたところからくると思われます。その巨大さや骨太な力強さ、そして神話から得た主題などはつくられた時点ですら20世紀初頭の「モダン」の主流とは遠かったでしょう。時代錯誤なのか時代を超越しているのかそのきわどさが気になる存在です。ー坂元暁美(上野の森美術館学芸員)
かつて師事したオーギュスト・ロダンの作風を継承しつつも、次第に独自の作風を確立し巨匠として評価されていったアントワーヌ・ブールデルは、パリにアトリエを構え、生涯その拠点で彫刻家としての人生を全うします。
現在そのアトリエは、ブールデル美術館として一般開放されていますので、パリを訪れた際にはぜひ足を運んでみてください。
設置場所 Location
大阪市西区江戸堀 大同生命保険大阪本社ビル 前広場