買い物客でにぎわう神戸の商業施設ハーバーランドのほど近く、比較的落ち着いた元ドックヤードのほとりにこの作品は設置されています。
作品データ Data
作品名 Title | 八時間労働発祥 記念碑 my sky hole 93-4 |
作家名 Artist | 井上 武吉 Bukichi Inoue |
制作年 | 1993年 |
寸法(H×W×D;cm) | ー |
備考 |
大正八年(1919年)当時の川崎造船所の松方幸次郎社長がわが国で最初に八時間労働制を実施したことを記念してここに碑を建立した ー作品銘板より
作品について About
井上 武吉先生は球形ステンレス作品や東京都庁の大規模なモニュメントなど、空間そのものを美術作品として造形した国内パブリックアートの制作事例も多く、世界的に名声を得つつある時期に、日本屈指の美術コレクターであった松方幸次郎氏に関わる、この作品の制作依頼を受けました。
彫刻家として紹介されたのはドーバー海峡開通記念モニュメントなどを手掛けた有名彫刻家の井上 武吉氏。同氏は「松方氏は日本美術界の大恩人。予算はいくらでもやらせていただく」と「破格の値」で立派な碑を作った。2007年には経済産業省が「近代化産業遺産群」に指定した。ー日本経済新聞『もっと関西 「8時間労働発祥の地」なぜ神戸? 川崎造船所が初 初代社長の先見(とことんサーチ)』より
1993年11月29日、この作品の除幕式で井上 武吉先生は「1日24時間を二分していたそれまでの労働時間を三分の8時間とすることで、瞑想や創造するといった人間らしい時間性を得て、『文化』は形成されはじめた」といった一文を寄せました。
一見、波を想い起こさせるフォルムですが、空や海、パームツリーなどの風景が磨かれたらせん状のステンレスに映り込み、空間が歪んで見えるような作品となっています。
井上 武吉先生はこの作品について、「無限の時間空間の一部である『8時間』を意味し、その開放された時間への意識に、宇宙とその無限を創造してみよう、と呼びかけている」と語りました。
しかしこの作品が完成した4年後の1997年、井上 武吉先生は心筋梗塞により、惜しまれながら67歳でこの世を去ります。
兵庫県伊丹市の「my sky hole 91-4 ITAMI」や、生まれ故郷の奈良県室生村に制作された瞑想空間の作品「my sky hole 地上への瞑想、室生」、滋賀県大津港にあるシンボル緑地全体を造形した作品「my sky hole 97-2 水面への回廊、琵琶湖」など、日本における抽象パブリックアートの旗手として名作を世に放ちつつある最中のことでした。
イタリアやフランスにも大規模な作品を残した、世界的彫刻家の作品をゆっくりと鑑賞するとともに、できれば奈良県や滋賀県の作品にも足をのばしてみてください。
設置場所 Location
神戸市中央区東川崎町 煉瓦倉庫西広場